治療の第一歩であるカウンセリング。
「早く診断をもらって次に進みたい」という焦りや「性同一性障害じゃないと言われたらどうしよう」という不安で頭がいっぱいになっている方も多いかもしれません。
僕自身、初めて病院を受診したときは、期待と不安が入り混じった複雑な気持ちでした。
でも今振り返って思うのは、カウンセリングは単に「治療の許可をもらう場所」ではないということです。
今回は、カウンセリングで先生が何をチェックしているのか、その本当の意味についてお話しします。
先生がチェックしているのは「勘違い」と「後悔」の可能性
精神科の先生は、ガイドライン(ICD-10やDSMといった国際的な基準)に沿って診断を進めます。
でも、それ以上に先生が真剣に見極めようとしているのは「このまま進んで、あなたが将来後悔することはないか?」という点です。
A.反対の性に対する強く持続的な同一感がある
(他の性である事によって得られると思う、文化的有利性に対する欲求
だけではない)
1. 子供の場合
その障害は、次(4つ以上)の形で現れる。
(1) 反対の性になりたい、または自分の性が反対であると、くりかえし主張する。
(2) 男の子の場合、女の子の服を着るのを好む、または女の子の格好をまねるのを好む。
女の子の場合、定型的な男の服装のみを身につけたいと主張する。
(3) ままごと遊びなどで、反対の性の役割をしたいという気持ちが強く持続する。
または、反対の性であるという空想を続ける。
(4) 反対の性の典型的なゲームや娯楽に加わりたいという強い欲求がある。
(5) 反対の性の遊び友達になるのを強く好む。
2. 青年および成人の場合
その障害は、次のような症状で現れる。
(1) 反対の性になりたいという欲求を口にする。
(2) 何度も反対の性として通用する。
(3) 反対の性として生きたい、扱われたいという欲求がある。
(4) 反対の性に典型的な気持ちや反応を、自分が持っているという確信がある。
B.自分の性に対する持続的な不快感、または、その性の役割についての不適切感がある
1. 子供の場合
その障害は、次のどれかの形で現れる。
(1) 男の子の場合
① 自分のペニスや睾丸は気持ち悪い、またはそれがなくなるだろうと主張する。
② ペニスなんかないほうがよかったと主張する。
③ 乱暴で荒々しい遊びを嫌い、男の子に典型的な玩具・ゲーム・活動を拒否する。
(2) 女の子の場合
① 座って排尿するのを拒絶する。
② 乳房が膨らんでくることや、月経の始まりを拒絶する。
③ 普通の女性を嫌悪する。
2. 青年および成人の場合
その障害は、次のような症状で現れる。
(1) 第1次性徴および第2次性徴から解放されたいという考えにとらわれる。
そのため、反対の性らしくなる手段として、性的な特徴を身体的に変化させる
ホルモン療法や外科手術、または他の方法を要求する。
(2) 自分が誤った性に生まれたと信じる。
C.その障害は、身体的に半陰陽を伴ったものではない
D.その障害は、臨床的に著しい苦痛または、社会的・職業的または
他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている
- 「今の性別が嫌」=「性同一性障害」とは限らない
今の生活がうまくいかない原因を「性別」に求めてしまい、性別を変えればすべて解決すると思い込んでしまっているケースも稀にあります。 - 後悔して裁判を起こした事例もある
一度手術をして身体を変えてしまうと、完全に元に戻すことはできません。
実際に、性別変更をした数年後に「やはり元に戻したい」と申し立てをした方のニュースも過去にあります。
先生はあなたを否定しようとしているのではなく、こういった悲しい結末を全力で防ごうとしてくれているのです。
カウンセリングで「自分」をさらけ出すこと
「診断が欲しい」という思いが強いと、つい自分を男らしくアピールしたり過去のエピソードを少し大げさに話したくなったりするかもしれません。
でも、それは一番もったいないことです。
- 嘘は、いつか自分を苦しめる
診断をもらうためだけの「正解」を演じてしまうと、本来解決すべき心の葛藤を見逃してしまうことになります。 - 目的は「診断書」ではなく「自分自身の納得」
カウンセリングは、先生に認めてもらう時間ではなく、先生という「鏡」を通して、自分がこの先どう生きたいのかを定めていく時間です。
よくある不安:幼少期の記憶や恋愛対象について
読者の方からよく相談をいただく「不安なポイント」についても、僕の経験を交えて整理しておきます。
- 幼少期の記憶がなくても大丈夫
「小さい頃から違和感があった」というエピソードは典型的ですが、全員に当てはまるわけではありません。
僕自身も幼少期の記憶はほとんどなく、はっきりと意識したのは思春期や社会人になってからでした。 - 好きになる対象は関係ない
「男性が好きだからFTMではない」と言われることはありません。
性自認(自分が何者か)と性的指向(誰を好きになるか)は別の問題です。
終わりに:ありのままの自分をしっかりと伝えてください
先生も、あなたが自殺したり後悔したりしてほしくない、と心から願っています。
カウンセリングの椅子に座るときは、背伸びをしたり見栄を張ったりする必要はありません。
今のあなたの素直な気持ちを伝えてください。
もし「自分は性同一性障害ではないかもしれない」という結果になったとしてもそれは失敗ではなく、新しい自分を見つけるための大切なヒントになります。
あなたの未来が穏やかで幸せなものであるために、カウンセリングという時間を大切に使ってほしいと思います。
