修学旅行が近づくにつれて、緊張がこみ上げてくる。
——それはきっと、楽しみよりも不安の方が大きいからではないでしょうか。
FTMにとって修学旅行のお風呂は、「どうやって乗り越えよう」と何度も頭の中でシミュレーションしてしまう、大きな壁のひとつです。
大浴場でみんなと一緒に入らなければならないのか、この体つきを見られるのが苦痛だ、先生に相談したら変に思われないか
……そんな不安が重なって、修学旅行自体が憂鬱になってしまう人もいるかもしれません。
でも、大丈夫です。F
TMが修学旅行のお風呂問題を乗り越えるための方法は、いくつかあります。
この記事では、事前の相談から当日の実践的な対策まで、使いやすい5つの方法を丁寧に解説します。
FTMが修学旅行のお風呂で感じる不安とは
まず、自分の不安に名前をつけてみましょう。
FTMが修学旅行のお風呂で感じる苦しさは、「怖い」という一言では説明しきれない、いくつかの層から成り立っています。
女湯グループに入ること自体のつらさ
学校の修学旅行では、ほとんどの場合「女子はこちら」「男子はこちら」という形でお風呂の時間・場所が分けられます。F
TMにとって、女湯グループに割り振られること自体が、すでに大きな苦痛です。
「男湯に入りたい」という気持ちがあっても、体の状態や学校の状況から現実的にはそれができない。
かといって女湯にも平然と入れない
——そんな板挟みの苦しさを感じている人も多いのではないでしょうか。
胸を露出しなければならない苦痛
FTMにとって、自分の胸は「あってはいけないもの」という感覚を持っている人が多くいます。
普段はナベシャツで胸を押さえて日常を過ごしているのに、お風呂ではそれを外さなければならない
——そのギャップが、入浴を特別につらくさせます。
大浴場で胸を露出した状態でいること、それ自体が体に対する強い違和感と苦痛をもたらします。
これは「見られるかどうか」以前の問題として、自分自身が耐えられないつらさです。
修学旅行そのものが楽しめなくなる
お風呂への不安が大きくなると、修学旅行全体が「乗り越えなければならない試練」になってしまいます。
観光や友人との時間より、入浴のことばかりが頭を占拠してしまうのです。
だからこそ、事前に対策を考えておくことがとても大切です。
FTM修学旅行のお風呂問題を解決する5つの方法
FTMが修学旅行のお風呂を乗り越えるための方法を5つご紹介します。
どれが自分の状況に合うかを見ながら読んでみてください。
①担任や保健室の先生にあらかじめ相談する
最も確実で、かつ根本的な解決策は、信頼できる先生に事前相談することです。
「そんなこと相談できない」と感じる人も多いと思いますが、文部科学省は性別違和を抱える児童・生徒への適切な配慮を学校に求めており、多くの学校がLGBTQ対応のガイドラインを持つようになっています。
相談の方法としては、放課後に担任の先生か保健室の先生を個別に訪ねて、「性別のことで修学旅行のお風呂が心配です」と伝えるだけでOKです。
事情を説明し「個室シャワーや別の入浴時間を使わせてほしい」という具体的な希望を添えると、学校側も動きやすくなります。
また、相談した内容は基本的に他の生徒には伝えないよう、先生にお願いすることも大切です。
②個室シャワーや別の入浴設備を使わせてもらう
学校側に相談することで実現しやすいのが、個室シャワーや別の浴場の使用です。
修学旅行で泊まる旅館やホテルには、大浴場のほかに個室シャワーが設置されていることがあります。
また、宿泊施設によっては教員用の浴場を生徒に使わせてもらえることもあります。
具体的なイメージとして:夜、クラスメイトが大浴場に向かう中、自分だけ先生と一緒に別の入口から個室シャワーへ向かう
——そのような形での配慮を受けた当事者も多くいます。
「ひとりだけ違う」ことが少し恥ずかしく感じるかもしれませんが、それでも心と体の安心感は大きいはずです。
③入浴時間をずらす
個室シャワーや別の浴場がない場合でも、入浴時間をずらすという方法があります。
たとえば、クラスメイト全員が入浴を済ませた後の時間や、朝の早い時間帯に大浴場をひとりで使わせてもらえるよう、先生に調整をお願いする方法です。
人目がなければ、心の負担がずいぶん軽くなります。
旅館やホテルによっては、清掃が入る前の深夜や早朝に浴場が空いていることがあります。
先生を通じて宿泊施設に確認してもらえると安心です。
④大浴場内でタオルをうまく活用する
「やっぱり一緒に入らなければならない」という状況になったときのために、タオルの活用法も知っておきましょう。
日本の銭湯・温泉の多くは「タオルを湯船に入れてはいけない」というルールがありますが、浴場内でのタオルの持ち歩きは問題ありません。
体の前にタオルを当てながら移動することで、胸元を自然に隠すことができます。
脱衣所での着替えの際は、タオルを体に巻いた状態から素早く着替えるのがポイントです。
周囲もそれぞれ自分のことで忙しいので、意外と気にされないことが多いです。
⑤信頼できる友人だけに事情を話す
クラスの中で特に親しい友人が一人でもいれば、その人だけに事情を話すという選択肢もあります。
「実は性別のことで悩んでいて、お風呂が一緒だと辛いんだ」と伝えることで、友人がさりげなくフォローしてくれたり、一緒に個室シャワーを探してくれたりすることもあります。
すべてを打ち明ける必要はなく、「お風呂はひとりで入りたい」という一言でも十分です。
ただし、カミングアウトは慎重に。
信頼できると思っていても、情報が広まることがあります。
話す相手は本当に信頼できる人に限定しましょう。
学校に相談するときの3つのポイント
先生への相談は勇気がいることですが、いくつかのポイントを押さえておくと、話しやすくなります。
相談のタイミングは「修学旅行の1〜2ヶ月前」が理想
学校側が宿泊施設に配慮を依頼したり、入浴スケジュールを調整したりするには、一定の準備期間が必要です。
修学旅行の日程が発表されたら、なるべく早めに相談しましょう。
直前では対応が難しい場合があります。
伝え方の例文
先生への伝え方に迷ったら、以下のような言葉を参考にしてください。
- 「性別のことで少し悩みがあって、修学旅行の入浴について相談したいのですが……」
- 「お風呂を大浴場ではなく、個室か別の時間に使わせてもらえると助かるのですが」
- 「このことは他の生徒には伝えないでいただけますか」
自分の性自認についての詳しい説明は不要です。
「入浴に困りがある」という事実だけを伝えれば十分です。
学校側の対応義務について
文部科学省は2015年に「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」という通知を全国の学校に発出しており、性別違和を抱える生徒への合理的配慮を求めています。
その後も対応は拡充されており、学校が配慮を拒否することは基本的にできません。
万が一、先生に相談しても取り合ってもらえない場合は、保護者と一緒に学校に申し入れるか、スクールカウンセラーや教育委員会への相談という手段もあります。
それでも不安なときは、一人で抱え込まないで
修学旅行のお風呂問題は、FTMにとって本当に心が重くなる悩みです。
「なんでこんなことで悩まなきゃいけないんだろう」と感じることもあるかもしれません。
でも、その悩みはあなたのせいでも、弱さでもありません。
うまく対処できたとしても、完璧にやれなかったとしても、それがあなたの価値を下げることには絶対になりません。
もし学校への相談が難しいと感じるなら、LGBTQを専門とする相談窓口や支援団体に連絡してみることも一つの手です。一人で抱え込まず、頼れる人・場所を見つけていきましょう。
- よりそいホットライン(LGBT専用):0120-279-338(24時間・無料)
- にじいろカフェ:LGBTQ当事者向けのオンライン相談サービス
※この記事は一般的な情報提供を目的としています。
具体的な医療処置や法的対応については、必ず専門の医療機関・相談窓口にご相談ください。
まとめ:FTM修学旅行のお風呂問題は事前準備で乗り越えられる
FTMにとって修学旅行のお風呂は、大きなストレスになりがちですが、事前に準備と相談をしておくことで、かなり楽になります。
- 担任や保健室の先生に早めに相談する
- 個室シャワーや別の入浴時間の使用を依頼する
- 入浴時間をずらして人目を減らす
- タオルで体をカバーする方法を準備しておく
- 信頼できる友人だけに話しておく
修学旅行は、あなたにとっても思い出に残る時間であってほしいと思います。
お風呂の悩みを少しでも軽くして、旅先での景色や友人との時間を楽しんでください。
あなたはその時間を楽しむ権利があります。
