性別適合手術や戸籍変更に向けて病院でのカウンセリングが始まると、最初の方で必ずと言っていいほど言われることがあります。
「これまでの自分史を書いてきてください」
幼少期から現在まで、自分がどのように性別違和を感じて生きてきたのか。
それを紙にまとめてこい、というわけです。
正直何から書けばいいのか分からず、真っ白な紙を前に途方に暮れてしまう人も多いのではないでしょうか。
僕も2006年に治療を始めた時、全く同じように手が止まったのを覚えています。
自分史は、単なる思い出話ではありません。
医師が「この人は本当に治療が必要か」を判断するための、いわばあなたの人生の「証明書」のようなものです。
この記事では、戸籍変更から15年以上が経った僕が当時実際に提出した自分史の構成を、実例を交えて解説します。
自分史の基本構成:何をどのくらい書くべきか?
自分史には「正しい書き方」の決まりはありません。
しかし、医師があなたのこれまでの歴史を把握しやすくするためには「年代ごとに区切って書く」のが最も効率的です。
目安としては、A4用紙1〜2枚程度。
以下の4つの時代に分けて、それぞれ印象的なエピソードを抜き出すのがおすすめです。
- 幼少期(幼稚園・保育園)
- 小学生時代
- 中高生・学生時代
- 社会人〜現在まで
【実例】僕が実際に書いた年代別のエピソード
これが実際に提出した自分史。
A4用紙3枚分です。
何を書いて提出したか、実際の文章を書き出してみたから参考にしてください。
幼児期
- 保育園以前、スカートをはかされていた
- 遊ぶおもちゃは女の子向けもあったがキン肉マン人形などでも遊ぶ
- 保育園に上がると、服装も短パン・Tシャツなどを好み始める
- それ以降スカートをはいたかどうかはよく覚えていない
- 男女平均的に遊んでいた。と思う。
小学校時代
- 制服は普通に着ていた…が好んではいない
- 3年の頃、教育実習の女先生に興味を持つ
- 黒いランドセルに少し憧れを持つ
- ブルマをはきたくないと思う。…が、5年の頃短パン・ブルマ選択に変わるので喜ぶ
- 自分の一人称をころころ変える
- 男子と遊ぶことも多くなる
- 夏休み、クラスの男子を家に呼びAVなどを見る(中学の時かも)
- 5年の頃、同じクラスの女の子に興味を持つ。が何らかの理由で諦める
- 5年の頃、生理が来る
- 6年の頃、またしても同じクラスの女の子に興味を持つ
中学校時代
- 小学校6年の時好きになった子を引き続き思い続ける
- なにかが原因でその子と喧嘩をする
- はぶられる、その女の子のグルー プに集中攻撃を受ける
- 趣味が合い仲良くしていた女子が同じクラスの男子に「お前よくあんなやつと一緒に居れるな」と言われたらしい
- それが原因で周りの目が気になり始める
- 2年の頃、なにやら良くない噂が広がり始める(しば犬は同性愛者だ的な内容)
- さらに周りが気になり始める
- 自分は同性愛者なのかと悩み始める
- 学校に行くのが嫌になり始める。仮病を使う事もあったが…嫌でも学校には行く
- 水着が嫌で水泳の授業を休み始める。3年では何か理由を付けてほぼ授業にはでない
- 体操服が短パンなので喜ぶ
- 気になる女の子が増え始めるが…恋愛に発展することはない・制服を仕方なく着る、という気持ちが増加し始める
- レズだと噂をされる
高校時代
- 制服は嫌だったが上がブレザー・ネクタイは喜んでいた
- スカートの下にジャージを履くことが増えてきた
- 初めて女性と付き合う
- 自分の事について真剣に悩み始める
- リストカットをしはじめる
- 自殺願望が増えてくる
- 自分の体・胸・生理への嫌気が増加し始める
- 周りの目が気になる
- 親に女っぽさを求められる
- 携帯にて同性愛のサイトを探すようになる
- あるチャット(セクシャル系)にたどり着きよく利用するようになる。色んな人との会話が楽しく、自分を偽ることなくいれる事の安心感があった
- インターネットを繋ぎ、色々検索するようになる
- 入社式の為に着る制服に抵抗。…が仕方なく着る
就職後
- 職場の制服がとてつもなく嫌だったが…着るしかないので着る。最大の抵抗としてスカートではなくキュロットをはく
- いつの間にか親が再婚をしていた
- 自分は何者なんだろうと思う。悩みが増える
- 自殺願望・リストカットが増える
- 自分はこれではいけないのか。と男性と付き合ってみる
- そんな自分に疑問、気持ち悪さに耐えられる別れる
- 胸をつぶしたいと真剣に考える
- 職場に女性扱いされることを苦痛に感じる
- 男性の制服(カッターシャツ・ネクタイ)を真剣にうらやましがる
- やはり親に女っぽさを求められる
- 性同一性障害を知る
- ネットで「性同一性障害」 「トランス」などを検索。色々な事を知り始める
- 自分は女じゃない。そう思いながらも親や家などの将来を考えると親にいう事もできず 、気持ちを押し殺す毎日がつづく
- 日に日に自分を偽ることに疲れをかんじる
- 胸が膨らんでいることに耐えられず 、親に内緒でサラシを買い、外出時につぶすようになる
- ネットにてナベシャツを購入する
- 会社の制服の規制がほぼ自由になる。それをきっかけにカッターシャツにネクタイで出勤する
- ようになる
- 姉に自分の子供の頃の事を聞く。自分が父親だと思っていた人が父親じゃなかった子を知る
- 自分の体の違和感が増し続ける。それが原因で情緒不安定気味になる
- 姉を通じて家族に自分が性同一性障害だとカミングアウトする。…が、その時の記憶がまったくない
- カミングアウトした後もナベシャツなどを隠していたが親にばれる
- 親に「何も隠さないで言えばいいんだよ」と言われる
- 治療を真剣に考える
- 今の彼女との将来を真剣に考える。が、親に言えないで悩む
- 彼女と暮らすために家を出ることを考え親を説得し、1人暮らしをはじめる・自分の思い、考え、進もうとしている未来を手紙にて親に告白する
- 家族にて話し合いをする
- 病院をネットで探す 。医師会連盟にメールを出して〇〇病院の〇〇先生より返事が来る
- 〇〇病院にて診察を受ける(血液検査・治療の説明)
- 〇〇病院にて血液検査の結果を聞く。(地元)県立医大の紹介を受ける
- (地元)県立医大の〇〇先生の話を聞く。岡山の医大の紹介をうける
書くときに意識したい「3つのルール」
自分史をまとめる際、僕が大切だと思ったポイントは以下の3つです。
1. 「格好いい文章」にしようとしない
自分史は作文のコンクールではありません。
箇条書きでも構いません。
飾った言葉よりも、あなたの「素直な感覚」が伝わることが重要です。
2. 嫌な記憶も「事実」として淡々と書く
過去を振り返るのは精神的に削られる作業です。
深く入り込みすぎず「当時、自分はこう感じていた」という事実を記録するつもりで書いてみてください。
3. 「一貫性」を大切にする
幼少期から現在まで、どのように違和感が続いてきたか。
その一貫性が見えるように書くと、医師とのコミュニケーションがスムーズになります。
まとめ:自分史は「未来へ進むための準備」
自分史を書く作業は、過去の自分と向き合うことでもありエネルギーを使う作業です。
思い出したくない記憶に触れて、筆が止まってしまうこともあるかもしれません。
しかしこの自分史を書き上げることは、単に医師に提出するためだけではなく「自分がこれからどう生きていきたいか」という決意を自分自身で再確認するプロセスでもあります。
- 完璧を目指さない(箇条書きでOK)
- 事実に徹する(淡々と記録する)
- 一貫性を意識する(違和感の線を繋ぐ)
まずは今日、一つだけエピソードをメモすることから始めてみてください。
あなたがこれからの人生を自分らしく歩んでいくための、確かな一歩になることを願っています。
