今年で45歳になる。
ホルモン注射を始めたのが24歳のころだから、気づけばもう20年オーバー。
20年…。
自分で書いててもなんかピンとこない数字。
最初のころは体が変わるたびに一喜一憂してたと思う。
ちょっとした変化でも「おっ」ってなってワクワクして。
でも今は、数週間に一度の病院通いが完全に「ルーティン」になってる。
歯医者に行くのと、感覚としてはあまり変わらない。
それが20年という時間のリアルなところだ。
この記事では、ホルモン注射を20年打ち続けた体が今どうなってるか。
髭、声、体型、健康面まで、当事者として正直に話してみようと思う。
24歳のころ、僕は何を期待していたか
治療を始めたとき、「体がどう変わるか」への期待と不安が入り混じってた。
髭が生えてほしい、声が低くなってほしい、体つきが変わってほしい。
そういった望みが一つひとつ叶っていくような感覚が、最初の数年間にはあったと思う。
生理が止まったとき。声がちょっと低くなったと感じたとき。
そのたびに、自分の体が「自分のもの」に近づいてる実感があった。
あれの時のなんとも言えない気持ちは本当によかった。
言葉にしにくいけど、じわっとくるものがあったんだよね。
今でもあのころのことはよく覚えてる。
でも20年経った今、あのころ期待していたものと現実の自分の体を正直に比べてみると…思ってたのと少し違う部分も、ちゃんとある。
変わったけれど「思ってたのと違う」を正直に書く
髭は生えてる。
濃さも「普通の男性」くらいにはなってると思う。
ただ、ひげ剃りがどうも下手くそで、いつもキレイに剃れないのが地味な悩みとしてずっと続いてる。
なんで20年経っても上達しないのか、自分でも謎だ。
まあ剃れてるだけよしとしよう。
そして当然、ワクワクもしなくなってしまった。むしろ邪魔くさい。
体毛は、下半身がとにかく濃い。
これはもう諦めてる。
ホルモン注射による変化としては十分すぎるくらいだとは思ってるんだけど、剃るのも面倒なので基本は放置。
数ヶ月に1回、ふと唐突に剃る。
声は、意識すれば低く保てる。
でも気を抜いたとき、テンションが上がったとき、ちょっと高めになる。
「分かる人が聞いたら、FTMだと気づくんじゃないか」ってふと思う瞬間があって、そういうとき、なんとなく嫌な気分になる。
大げさなものじゃない。
ちょっとした嫌悪感、くらいの話。
ただそれが20年経っても完全には消えないんだよね。
体型は、ホルモン注射のおかげで筋肉がつきやすい体質にはなってる。
でも現実は、腹が出てきた。
40代あるある、ということにしておく。
筋トレをちゃんとやってたら、もっと格好良くなってたんだろうなとは思う。
ホルモンの力を活かして体を作るチャンスは、若いうちにあったんだよね。
それをサボったのは自分なので仕方ないんだけど
——半分冗談、半分本気で後悔してる。
そして、ある日気づいた——変化には天井がある
最近、おでこが後退してきた。
男性ホルモンって薄毛に影響するらしくて、AGAみたいな感じで進んでいくらしい
「男になりたかったのに」とか「男らしくなった証だ」とか、そういう感情は特にない。
ただの老化だな、って思ってる。
…とはいえ、ハゲは嫌だよ。普通に。
薄毛の話とは別に、もうひとつ気づいたことがある。
どの時点かははっきり分からないんだけど、いつからか変化を感じなくなった。
もっと顔つきが変わってほしかった。
手がもっと男らしかったら、と思うこともある。
そういう願いは今もある。
でもどうやら、僕のホルモンではここが上限らしい。
ホルモン注射の効果って個人差が大きくて、骨格・顔立ち・手の大きさはもともとの体格の影響が大きい。
「これ以上は変わらない」っていうラインは、人によって違う。
受け入れる、というより、折り合いをつけた、っていう感じが近い。
パスはできてる。
だから「まあ仕方ない」って思ってる。
葛藤というほど大げさなものでもなく、ただそう思ってる。
(本当は少し悔しい)
20年分の積み重ねが、体に出てきた
打ち始めたころから、血液が濃くなりやすい体質になってる。
ホルモンの影響で血液が濃くなりやすくなってて、ずっとそれを指摘されてきた。
定期検査で毎回指摘されてきたけど、毎回「次の数値を見て量や間隔を調整しよう」という話になるだけで、特に深刻な警告を受けたことはない。
ホルモン注射が原因なので、やめない限り根本的な対策もとくにない。
それが現状だ。
正直、年々体のことが気になるようになってきた。
何か調子が悪いとき、これは血液の濃さのせいなのか、ただの疲れなのか、年齢のせいなのか判断がつかない。
20代のころは「体の変化」をワクワクしながら追いかけてた。
それが40代になると、同じ「体の変化」がちょっと怖くなる。
これも、20年経って分かったことのひとつだ。
「一生打ち続ける」ということ——20年経って、どう思ってるか
「一生打ち続けるの?」と聞かれることがある。
答えは、基本的にはそうだ。
FTMの場合、卵巣を取ってる場合、やめたら体は少しずつ変わっていく。
だから打ち続ける。
これを「覚悟」と感じてたのは、最初だけだったと思う。
20年も続けてると、さすがに慣れる。
数週間に一度の病院通いも、今では完全に生活のルーティンだ。
「たまにサボりたいな」と思うことはあっても、やめようとは思わない。
それって割と大事なことだと思ってる。
打ち忘れたり間隔が空いたりしても、体調に大きな変化を感じることはない。
(体調が悪くなることはあるし、間隔を開けることは推奨しない)
それもあって、注射に対する意識が良い意味で薄れてきてる。
「打ってる自分」じゃなくて、「普通に生活してる自分」になってきてる感じ、とでも言えばいいかな。
24歳の自分に言うとしたら
20年打ち続けた体は、劇的でも悲劇的でもない。
それなりに変わって、それなりに年をとって、それなりに今日も生きてる。
24歳の自分に何か言えるとしたら——
「真面目に筋トレしてたら、もっとかっこよくなってたかもよ」
たぶんそれだけかな。笑
体のこととかより、そっちのほうが悔しい。
変化には個人差がある。限界もある。
それでも続けながら、自分の体と少しずつ折り合いをつけてきた。
たぶんそれが、この20年だったんだと思う。
焦らなくていいし、完璧に変わらなくていい。続けてれば、それでいい。
