「そろそろホルモン治療を始めたい。
でも、注射の種類がたくさんあって、どれを選べばいいのかわからない」
FTMのホルモン注射を調べはじめると、聞き慣れないカタカナの薬品名が並んで、気持ちが少し重くなることがあるかもしれません。
「自分に合うのはどれ?」「投与頻度は?」「副作用は大丈夫?」。
情報を調べれば調べるほど、かえって頭の中がぐるぐるしてしまう
——そんな感覚、あるのではないでしょうか。
この記事では、FTMが使うホルモン注射(テストステロン製剤)の種類と特徴を、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
どんな種類があるのか、短期型と長期型の違いは何か、どんな人にどちらが向いているかなど、クリニックに相談する前の「予備知識」として役立てていただければと思います。
FTMにとってのホルモン注射とは
FTMのホルモン治療では、主に「テストステロン(男性ホルモン)」を補充する治療が行われます。
テストステロンは体内で男性的な特徴をつくる働きを持つホルモンで、FTMの方がこれを継続的に投与することで、身体に少しずつ男性化の変化が現れていきます。
代表的な変化としては次のようなものがあります。
- 生理が止まる(多くの場合、治療開始から数ヶ月以内)
- 声が低くなる
- 体毛・ひげが増える
- 筋肉がつきやすくなる
- クリトリスが肥大する(ボトム成長)
- 皮脂が増え、ニキビが出やすくなる
- 体型が男性的に変化していく
これらの変化は個人差がありますが、「体が自分に近づいてくる」と感じられる治療として、多くのFTM当事者にとって大切な選択肢のひとつとなっています。

FTMホルモン注射の種類——短期型と長期型
FTMのホルモン注射は、大きく「短期持続型」と「長期持続型」の2種類に分けられます。
どちらもテストステロン製剤ですが、体内での持続時間や投与頻度が異なります。
短期持続型:エナルモンデポーなど
短期持続型は、テストステロンエナント酸エステルを使った製剤です。日本国内で処方される主な商品名には以下があります。
- エナルモンデポー(125mg / 250mg)
- テストロンデポー(250mg)
- テスチノンデポー(125mg / 250mg)
投与頻度は125mgで2〜3週に1回、250mgで3〜4週に1回が目安です。
血中のテストステロン濃度が波打ちやすく、投与直後に高くなり、次の注射前には下がる傾向があります。
そのため、「注射後はエネルギッシュな感じがして、注射前はちょっと落ちる」と体感する方もいます。
一方で、「少量から始めて様子を見たい」「身体への影響を細かく調整したい」という方には向いている選択肢です。
日本国内で広く処方されており、入手しやすいというメリットもあります。
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長期持続型:ネビド・リアンドロン
長期持続型は、テストステロンウンデカン酸エステルを使った製剤で、代表的な商品名は「ネビド」「リアンドロン」などです。
最大の特徴は投与間隔の長さです。日本人の場合、1回の注射で5〜6ヶ月程度効果が持続するとされており、通院頻度を大幅に減らせます。
次のような方に向いているとされています。
- 通院が難しい・頻繁な受診が負担な方
- 血中濃度の波を少なくして、安定した状態を保ちたい方
- 短期型で効果を感じにくかった方
血中のテストステロン濃度が比較的安定するため、気分の波が少なくなると感じる方もいます。
ただし、1回の注射量が多くなるため、注射自体の痛みや体への負荷が短期型より大きめという面もあります。
また、ネビドにはジェネリック薬(後発品)も登場しており、費用を抑えたい方にとって選択肢が広がっています。
短期型と長期型、自分に合うのはどちら?
「どちらを選べばいいか」は担当医と相談しながら決めるのが基本ですが、選択のヒントとして次の表を参考にしてみてください。
| 短期型(エナルモンデポー等) | 長期型(ネビド等) | |
|---|---|---|
| 投与頻度 | 2〜4週に1回 | 5〜6ヶ月に1回(日本人の目安) |
| 血中濃度 | 波がある | 比較的安定 |
| 費用(1回) | 低め | 高め |
| 調整のしやすさ | 用量を細かく調整しやすい | 一度打つと調整しにくい |
| 向いている人 | 治療初期・用量を慎重に試したい人 | 通院を減らしたい・安定を求める人 |
治療を始めたばかりのうちは、まず短期型で様子を見てから長期型に移行するパターンも多いようです。
自分の生活スタイルや体の反応を見ながら、医師と相談して選ぶのがいいでしょう。
ホルモン注射を始めるまでの流れ
ホルモン治療を受けるには、まずGID(性同一性障害)またはDSD(性分化疾患)に対応したクリニック・医療機関を受診する必要があります。大まかな流れは次のとおりです。
- ジェンダー外来・専門クリニックへの受診:自分の状況を相談し、診察を受ける
- 診断と治療方針の確認:担当医と一緒に、どのホルモン注射が自分に合うか検討する
- 血液検査・健康状態の確認:治療前に肝機能や血液検査を行い、安全を確認する
- 治療開始:クリニックで注射を受ける。自己注射を許可している医療機関もある
- 定期フォロー:定期的な血液検査と診察で状態を確認しながら継続する
最近では「ジェンダー外来」を設けるクリニックが増えており、以前に比べて受診のハードルが下がってきています。
「一人でクリニックに行くのが怖い」という気持ちもあるかもしれませんが、信頼できる医師に出会えると、治療の見通しが格段に立てやすくなります。
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治療開始後に訪れる変化と、焦らず待つということ
「いつ変化が出るんだろう」
——ホルモン治療を始めると、毎日鏡を見ながらそう思う日が続くかもしれません。
変化の速さは人によってかなり異なりますが、おおまかな目安として以下のような流れが一般的です。
- 1〜3ヶ月目:クリトリスの肥大(ボトム成長)、性欲の変化、皮脂増加・ニキビ
- 3〜6ヶ月目:生理の減少・停止、声のかすれ・低下が始まる
- 6ヶ月〜1年目:体毛・ひげの増加、筋肉のつき方が変わる、体型の変化
- 1〜2年目以降:声の変化がより定着し、全体的な男性化が進む
変化のスピードは体質・年齢・ホルモン感受性などによって大きく違います。
「もう半年経つのに声が全然変わらない」と焦る気持ちもわかります。
でも着実に変わっていることが多いので、定期検査のたびに数値を確認しながら、担当医とコミュニケーションをとり続けることが大切です。
副作用と、知っておきたいリスクのこと
テストステロン注射は体に大きな変化をもたらす治療です。
メリットがある一方で、副作用についても正直に知っておくことが大切です。
主な副作用・注意点
- 多血症(赤血球・ヘモグロビンの増加):血液が濃くなりやすく、血栓リスクが上がる可能性がある。定期的な血液検査での確認が必要
- 肝機能への影響:長期使用で肝臓に負担がかかることがある
- ニキビ・体臭の変化:皮脂が増えてニキビが悪化することも
- 性欲の増加・気分の変動:特に治療初期に感じやすい
- 不妊(可逆性あり):ホルモン治療中は妊娠しにくくなる。将来の選択肢として卵子凍結を検討する方も
- 薄毛(AGA)のリスク:遺伝的素因がある場合、男性型脱毛が進む可能性
副作用の多くは定期的な検査と医師のフォローで管理できます。
「副作用が怖くて踏み出せない」という気持ちもあるかもしれませんが、リスクをゼロにすることよりも、リスクを把握したうえで適切な管理をしながら治療を続けることのほうが大切です。
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ひとりで抱え込まないために——相談できる場所を探そう
ホルモン注射の種類や副作用について調べていると、「自分にはハードルが高い」「本当に始めていいのか」という気持ちになることもあると思います。
それは当然の感覚です。
まずは情報を集めること、そして信頼できる医療機関に相談することが、大きな一歩になります。
最近ではオンライン診療でホルモン治療の相談ができるクリニックも増えており、「まず話だけ聞いてみる」というスタートも十分ありです。
また、FTM当事者のコミュニティやSNSでは、実際に治療を受けている方の体験談を知ることができます。
完全に同じ経験をしている人はいなくても、「一人じゃない」と感じられる場所は必ずあります。
ホルモン注射は、自分らしく生きるための選択肢のひとつです。
焦らず、丁寧に、自分のペースで情報を集めていきましょう。
