FTMが生理を止める方法|4つの選択肢と注意点

  • URLをコピーしました!

「生理が来るたびに、消えてしまいたくなる」
そんな気持ちを抱えながら、毎月をやり過ごしているFTMの方が少なくありません。

月経は体の変化のひとつですが、FTMにとっては単なる「不便さ」ではなく、自分の体と自分自身のあいだに深い溝を感じさせる体験です。

生理痛の辛さだけでなく、「この体は自分ではない」という感覚が強くなる。
性別違和が月経によって毎月掘り起こされる感覚は、経験した人ならよくわかると思います。

ホルモン療法を始めているのにまだ生理が続いている、あるいはホルモン療法に踏み出せないまま生理に苦しんでいる方もいるでしょう。

この記事では、FTMとして生理を止めるための代表的な方法を、医療情報をもとにわかりやすく解説します。
「どんな選択肢があるのか」「どこに相談すればいいのか」を整理して、あなたが自分に合った方法を見つける手がかりにしてください。

目次

FTMにとって生理がつらい本当の理由:体と心のズレ

FTMが生理を止めたいと思う理由は、「不快だから」という単純なものではありません。
その核心には、「性別違和(ジェンダー違和)」があります。

性別違和とは、自分が認識する性別(性自認)と、体の性別的な特徴や社会的に割り当てられた性別との間にある不一致から生じる苦痛のことです。
FTMにとって月経は、女性の生殖機能を体が持っていることを毎月強制的に意識させられる体験であり、自分の性自認と体の現実とのギャップを突きつけてきます。

生理のたびに気持ちが落ち込む、自分の体を見たくなくなる、学校や職場でのストレスが増す。
そういった影響は、決して「気のせい」や「弱さ」ではありません。
性別違和による精神的苦痛は、心の健康にも深刻な影響を与えうることが、多くの研究で示されています。

また、生理用品を購入すること、生理が来ていることを周囲に悟られること、職場や学校でのトイレ利用。
これらの「生理にまつわる日常のあれこれ」も、FTMにとっては性別違和を深める体験になりがちです。

生理を止めることは、FTMとして自分らしく生きるための大切な選択のひとつです。
その選択を支える医療的な方法が、今はいくつか存在しています。

FTMが生理を止める方法①:テストステロン(男性ホルモン)療法

FTMのホルモン療法として最も広く行われているのが、テストステロン(男性ホルモン)の投与です。
ボイスダウン、体毛の増加、体型の変化など体の男性化を促すとともに、多くのケースで月経が止まる効果があります。

テストステロン投与で生理が止まる仕組み

テストステロンを体内に投与すると、脳の視床下部・下垂体からのゴナドトロピン(FSH・LH)の分泌が抑制されます。
これにより卵巣の機能が低下し、排卵が起きなくなる結果、月経も止まるという仕組みです。

効果には個人差があり、投与開始後3〜6か月以内に月経が止まる方が多いとされていますが、投与量や体質によっては1年近くかかるケース、または完全には止まらないケースもあります。

投与方法の種類

  • 筋肉注射(エナント酸テストステロン):日本で最も一般的な方法。エナルモンデポー®などを2〜4週間ごとに医療機関で投与します。注射の間隔によって血中濃度が変動しやすいという特性があります。
  • ゲル剤・クリーム剤:毎日皮膚に塗るタイプ。血中濃度が比較的安定しやすいですが、日本では入手できる製品が限られており、現時点ではFTMにとって現実的な選択肢とはなっていません。
  • 貼り薬(テストステロンパッチ):皮膚に貼って使うタイプ。日本では入手が難しく、現時点では現実的な選択肢とは言えません。

テストステロン療法を受けるにはどこへ?

テストステロン療法は、一般の婦人科ではなく、性別違和を専門とする「ジェンダークリニック」「ジェンダー外来」で処方してもらうのが原則です。
精神科の診断(性別不合の診断)が必要なケースがほとんどです。

主な受診先としては、大学病院附属のジェンダークリニック(岡山大学、北海道大学など)や、私立のジェンダー専門クリニックがあります。

近年は地方でも相談できる医療機関が増えてきています。

テストステロン療法の注意点

  • 将来の妊娠・出産に影響する可能性がある(投与を止めると月経が再開するケースが多いが、長期的影響には個人差がある)
  • 多血症(赤血球が増えすぎること)、肝機能への影響など定期的な検査が必要
  • ニキビや体臭の変化が起きることがある
  • 精神状態の変化(気分の波が変わる)が起きることがある

FTMが生理を止める方法②:低用量ピル・黄体ホルモン製剤

テストステロン療法を始めていない方や、まだ専門機関への受診が難しい方にとっての選択肢が、婦人科で処方できる低用量ピルや黄体ホルモン製剤です。

低用量ピル(LEP製剤)の連続服用

低用量ピル(LEP:低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)は、本来は避妊や月経困難症の治療に用いられますが、「連続服用」という服用方法をとることで月経を来させないようにすることができます。

通常のピルは21日間服用して7日間の休薬期間を設けますが、この休薬期間をなくして継続服用することで、月経が起きなくなります。
これは「月経コントロール」として医師の指示のもとに行われることが一般的です。

FTMであることを医師に伝えると、月経を止めることを主な目的として処方してもらえる可能性が高まります。
LGBTに理解のある婦人科クリニックであれば、事情を汲んで柔軟に対応してもらえることが多いです。

ジエノゲスト(ビザンヌ®)

ジエノゲストは黄体ホルモン(プロゲスチン)製剤のひとつで、日本では「ビザンヌ®」などの商品名で販売されています。
本来は子宮内膜症の治療薬として使われますが、服用により月経が止まる効果があります。

FTMの方がジエノゲストを服用することで月経を止めている事例は多く、理解ある婦人科で相談すると処方してもらえることがあります。

ただし、不正出血(月経ではない出血)が起きやすい初期の副作用に注意が必要です。

👉 生理ケア・月経コントロールに関する参考リンク

FTMが生理を止める方法③:IUD(ミレーナ®)

IUD(子宮内避妊器具)の中でも、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を局所的に放出する「ミレーナ®」は、月経量を大幅に減らす、あるいは月経を止める効果があるとして知られています。

ミレーナ®の特徴

  • 子宮内に直接挿入するため、全身へのホルモンの影響が少ない
  • 月経量が平均約90%減少するとされており、完全に止まる方も多い
  • 一度挿入すると5年間効果が持続する
  • 挿入後は毎日薬を飲む必要がない

ミレーナ®を選ぶ際の注意点

ミレーナ®の挿入は婦人科で行われます。挿入時にはある程度の痛みを伴うことがあり、未経産婦(出産経験のない方)では特に痛みが強いケースがあります。
挿入後数か月は不正出血が続くことが多いことも知っておきましょう。

テストステロン療法との併用については、担当医に確認が必要です。
両方を使用しているFTMの方もいますが、体の状況によって判断が異なります。

FTMが生理を止める方法④:手術による根本的解決

月経を根本的に止める方法として、外科手術という選択肢もあります。
これはより大きな決断を伴いますが、長期的に月経から解放されることを望む方には、最終的な選択肢となります。

子宮摘出(子宮全摘術)

子宮を摘出することで月経は永久に止まります。
FTMの性別適合手術のひとつとして位置づけられることもあります。

日本では、性同一性障害の診断を受けた方がGID診療ガイドラインに基づいて手術を受けるケースが多く、手術には健康保険が適用される場合があります(ただし、適用には条件があります)。

具体的な手順や必要な診断書の要件は医療機関によって異なるため、担当医に確認することをおすすめします。

卵巣摘出(卵巣切除術・付属器切除術)

卵巣を摘出することで、女性ホルモン(エストロゲン)の産生が止まります。
これによりテストステロン療法の効果がより安定しやすくなるという利点もあります。

子宮摘出と組み合わせて行われることが多く、腹腔鏡手術で実施されるケースが増えています。
術後はエストロゲンがほぼゼロになるため、テストステロンの補充は継続が必要です。

いずれの手術も不可逆的な選択です。
後悔のない決断のために、複数の専門家に相談すること、十分な時間をかけて考えることが大切です。

FTMが婦人科・ジェンダークリニックを受診するための準備

「婦人科に行くのが怖い」「自分の状況を理解してもらえるか不安」
そう感じているFTMの方は多いと思います。

でも、適切な医療的サポートなしに生理の問題を解決することは、なかなか難しいのも現実です。

LGBTフレンドリーなクリニックの探し方

近年は、LGBTや性的マイノリティに理解のある婦人科クリニックが増えています。
以下の方法でクリニックを探してみてください。

  • 「LGBT フレンドリー 婦人科 +地域名」で検索する
  • FTMやトランスジェンダーのSNSコミュニティで受診経験談を探す(XやInstagramのハッシュタグなど)
  • 性的マイノリティ支援団体に相談し、紹介してもらう
  • ジェンダー外来のある大学病院(岡山大学病院、北海道大学病院、埼玉医科大学病院など)に問い合わせる

受診前に準備しておくこと

受診をスムーズにするために、以下の情報をメモしておくと役立ちます。

  • 自分がFTMであること(または性別違和があること)
  • 生理を止めたい理由(性別違和による精神的苦痛など)
  • 現在のホルモン療法の有無と内容
  • 服用中の薬がある場合はその情報
  • 将来の妊娠・出産に関する考え(妊娠を希望するかどうか)

電話やWeb予約の際に「性的マイノリティの方ですが受診できますか」とあらかじめ確認しておくと、当日の安心感が格段に違います。

FTMが知っておきたい費用と保険適用について

治療にかかる費用も、受診を踏みとどまらせる要因のひとつかもしれません。
以下に各方法の費用感の目安を紹介します(医療機関によって異なりますのであくまで目安として参考にしてください)。

  • 低用量ピル:自由診療の場合、月に2,000〜5,000円程度。月経困難症の治療として処方される場合は保険適用になることがある。
  • ジエノゲスト(ビザンヌ®):子宮内膜症の治療として保険適用。月に1,000〜3,000円程度(3割負担の場合)。
  • ミレーナ®:挿入費用は自由診療の場合で3〜5万円程度。月経困難症の治療としての処方は保険適用になることがある。
  • テストステロン注射:保険適用の場合、薬剤費の目安は月300〜800円程度です。診療費を含めると月数千円程度になることが多いですが、クリニックや処方内容によって異なります。
  • 子宮摘出・卵巣摘出:性別適合手術の一環として行う場合は保険適用になる場合がある(2018年より保険収載)。条件については医師に確認を。

費用面の不安がある場合は、受診前にクリニックに電話で費用感を確認するか、自治体や支援団体が提供する相談窓口を利用してみてください。

まとめ:FTMが生理から解放される第一歩は相談から

この記事では、FTMとして生理を止める主な方法を解説しました。要点を振り返ります。

  • テストステロン(男性ホルモン)療法:ジェンダークリニックで受ける本格的なホルモン療法。体の男性化と合わせて月経を止める効果がある。専門機関での受診と診断が必要。
  • 低用量ピル・黄体ホルモン製剤(ジエノゲストなど):婦人科で処方可能。テストステロン療法に踏み出す前の選択肢や補助的な使用として有効。連続服用により月経を止められる。
  • IUD(ミレーナ®):子宮内に挿入する局所ホルモン療法。月経量を大幅に減らし、止める効果がある。5年間効果が持続し、毎日薬を飲む必要がない。
  • 子宮摘出・卵巣摘出:根本的な解決策だが不可逆的。十分な検討と専門家への相談が必須。保険適用の条件を確認すること。

まず取り組める一歩は、「LGBTフレンドリーな婦人科やジェンダー外来に相談の連絡をしてみること」です。
いきなり受診するのが怖ければ、電話やメール相談から始めても構いません。
一歩踏み出すことで、選択肢が見えてきます。

生理に苦しんでいるのはあなただけではありません。
そしてその苦しみは、解決できます。

あなたのペースで、あなたに合った方法を見つけていけることを願っています。

※この記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な治療については必ず専門の医療機関にご相談ください。

この記事が気に入ったら
いいねしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次